契約書の英日翻訳は翻訳会社に依頼するべき?翻訳家が解説!

急速に進展するグローバル化にともない、企業の海外進出や海外との取引は増え続けています。
海外とのビジネスで必須となるのが、英文契約書です。英文契約書の翻訳には高いスキルが必要であり、スムーズにビジネスを進めるためには、対応の迅速さが求められます。

今回は、「契約書の英日翻訳は人による翻訳が必要なのか?」について契約書の難しさと法律や英語の違いなどの点から検証していきます。

契約書の英日翻訳は人による翻訳が必要?

契約書の英日翻訳は人による翻訳が必要?

契約書とは、ビジネスにおいて立場の違う二者が合意した取引に関する条件を記載し、証明する文書です。契約書には秘密保持契約、ライセンス契約、業務委託契約書など多岐にわたる種類があります。
契約書はお互いの権利や義務などを明確にし、取引開始後の契約上のトラブルを回避するための法的な文書です。

英日翻訳なら、自分で辞書を引きながらどうにか日本語の文章にすることはできるかもしれません。概要だけ把握できればいいという場合は、機械翻訳を使用するのも1つの手段です。ただし、単純に日本語に変換しただけで実質的な意味や、法的な効果が正確に理解できていなければ、自社にとって不利な契約になっていないかどうかを判断することは難しいでしょう。

法律分野の翻訳は、法律専門用語や表現、言い回しを習得し、決められた書式に従って行わなければなりません。法的な文書においては、ささいな解釈の違いや読み違いであっても企業生命に致命的なダメージを与えかねません。ほかの分野の翻訳よりも原文に忠実であること、厳密で正確であることが求められます。

英文契約書の難しさ

おもに次の2つの理由により、英文契約書は難しくなっています。

1.専門用語が難しい

見たことのない専門用語が頻出する長文の英文契約書を読むことは容易ではありません。
英文契約書の専門用語には次のような特徴があります。

  • 日常英会話ではあまり使われない単語が使われている
  • 知っている単語でも日常英会話とは違う意味を持っている
  • 契約書特有の専門的な英語がある
  • 長い単語、見た目で発音がわからない単語がある

英和辞書で調べれば専門用語の単語としての日本語訳はわかりますが、どう解釈すればいいのかで悩んでしまいます。
一般英語では使われない英単語は覚えにくく、まとめて並べて暗記しようとしても記憶に定着しません。専門用語や表現などの法律英語の知識を蓄積していくには相応の時間を要します。

2.一文が長い

上述の専門用語の難しさに加えて、英文契約書は一文が長く、構造も複雑になっています。

英米法では契約書に記載されている内容が重視され、口頭でのやり取りは効力をもたないとされています。よって、英文契約書は広範囲にわたる取引条件の詳細が盛り込まれているため長文になります。
英文契約書の文章には次のような特徴があります。

  • どこに主語、動詞、目的語があるのかわかりにくい
  • 文章が and と or でつなげられていて、どこまで続いているのかわかりにくい
  • どこが重要ポイントなのか判断がつきにくい

以上のとおり、英文契約書を読むにはまず専門用語を覚えて、次に長文に慣れていかなければなりません。
法律英語を習得するには一定期間集中してトレーニングを行わないと難しいでしょう。

法律文書の日本語表現の難しさ

法律を勉強した経験がない人にとって、契約書は日本語で書かれていても難しい文書です。
流し読みでは理解できず、主語が誰であったか、どこにあったかを途中で見失い何度も文頭に戻って読み返すことになるでしょう。

原文が英語の契約書を日本語に翻訳する際には、まず英文を理解することから始めます。自分がなんとなく内容を理解できたところで、ほかの人にもわかるように適切な日本語で説明できなければならないのですが、経験がないとどのように表現すればいいのかわからず、言葉が出てこない…という事態に陥ります。

法律文書の英語と同様に、法律文書の日本語も表現が難しく、日常会話ではまったく使われないような言い回しや、日本語特有の冗長さがさらに強調されたような文体もあります。法律文書の日本語表現に慣れるためには、日本語で書かれた契約書や法律文書を読み込んで少しずつ表現を習得していくしかありません。
契約書の英日翻訳で、読む人が正しく理解できる日本語訳文を作成するためには、難解な内容でも可能な限り自然な日本語で表現する必要もあります。

契約書の英日翻訳に求められる能力とは?

契約書の英日翻訳に求められる能力とは?

法律英語の語学力に加えて、契約書の英日翻訳には次の2つの能力が必要になります。

相手国の法律に精通している

契約書としての内容を正しく理解して適切な日本語表現で翻訳するには、法律英語の知識に加えて日本の法律と相手国の法律について法律の歴史や法体系のしくみから理解しておかなければなりません。

日本では、イギリスやアメリカの法律を指す際に「英米法」といいますが、これは英国(イギリス)法+米国(アメリカ)法という意味ではありません。通常は、コモン・ロー(common law)と呼びます。これは元々イギリスで発展した法概念であり、イギリスが世界中に植民地を持ったために各国に広がったイギリス法を中心とする法体系を指します。アメリカ、カナダ、オーストラリアなども英米法の仲間に入ります。

世界の法律体系として、英米法系のほかにはヨーロッパ大陸法系があります。
日本は、明治時代にドイツやフランスの法概念を参考にして法の近代化をすすめたため、大陸法系に属しています。

英米法の特色は判例法主義です。本来的には裁判所が決定した判断はその案件のためのものですが、同様の事件においては裁判の先例を重視し、判例の集積を法として認めるものです。
一方、大陸法系では、成文法主義をとっています。まず法典が存在し、議会や政府により作られた制定法こそが法であるとされています。

また、法体系が同じでもそれぞれの国ごとの法律があります。
契約書の英日翻訳を翻訳会社に依頼する際には「該当する相手国の法律文書」の翻訳に実績があるのかを確認しておきましょう。

イギリス英語とアメリカ英語の違いを理解している

世界でおもに使用されているのはイギリス英語とアメリカ英語です。ほかにカナダ、オーストラリア、インドなどの英語もありますが、これらは主要英語2つのどちらかの仲間に入ります。

英文契約書に多く含まれる専門用語や表現はその国の法律に基づいています。
英日翻訳の場合はイギリス英語とアメリカ英語の微妙に違うニュアンスを読み取り、適切な日本語で表現しなければなりません。

イギリス英語とアメリカ英語はどのように違うのか?

日本の義務教育では基本的にアメリカ英語を採用しているため、アメリカ英語のほうが慣れている人が多いかもしれません。英文を読んでいて「この単語のスペル間違っている?」と思ったらイギリス英語の表記だった…という経験がある人もいるでしょう。

イギリスとアメリカでは日常使用する言語において、約4000語の異なった単語を使っているといわれています。
実際はどのように違うのか例をみてみましょう。

①スペリングの違い

イギリス英語とアメリカ英語で違いが多いのはスペリングです。
よく知られている単語の例を紹介します。

日本語 イギリス英語 アメリカ英語
中央 centre center
colour color
はっきりと自覚する realise realize
プログラム programme program
分析する analyse analyze

ほかにもスペリングが異なる単語は多くあります。見た目で同じ意味であると判断できるものもありますがが、両言語でそれぞれの正確なスペリングを覚えるのは大変かもしれません。

②文法の違い

世界におけるアメリカの影響の大きさから、イギリスではアメリカ英語が使われることはあります。標準型英語にむけて併合するあらわれもあり、以前より違いは少なくなってきているといわれています。

おもな違いが残っている文法の例を一部紹介します。

例1)イギリスではhave got

日本語訳:彼は宿題がたくさんあったので、早く帰った。
イギリス英語:He went home early because he had got a lot of homework.
アメリカ英語:He went home early because he got a lot of homework.

所有をあらわすとき、イギリス人は”have got”、アメリカ人は”have”を使います。

例2)時間の表現

日本語訳:1998年5月20日
イギリス英語:day/month/year → 20/5/98 → 20th May 1998
アメリカ英語:month/day/year → 5/20/98 → May 20th 1998

アメリカ英語に慣れているとイギリス英語の数字表記のほうは正しく読めないかもしれません。

例3)集合名詞の単数/複数扱い

日本語訳:委員会はその議案を可決させようとしている。
イギリス英語:The committee are trying to pass the bill.
アメリカ英語:The committee is trying to pass the bill.

イギリス英語では、グループの複数メンバーの存在が強調され複数として扱われますが、アメリカ英語では単数として扱われます。

以上、イギリス英語とアメリカ英語の違いの一部を紹介しましたが、言語は変化し続けるものなので、今後変わっていく可能性があります。
イギリス英語とアメリカ英語の違いを確実に理解できる英語力は「アメリカに留学して大学を卒業し、イギリスの企業で5年間働いていた。どちらの英語も使う機会がある。」など「生きた英語」の使用経験により身につくものです。

また、英語は世界中でも最も広く使われている言語であるため、ビジネスの相手国が非英語ネイティブの場合でも、英文契約書でやり取りすることが多くなります。ひとつの文書においてはアメリカ英語かイギリス英語のどちらかに統一されているべきですが、相手方から提示された文書に両英語が混同している場合もあります。このような場合においても、適切な日本語に訳せるレベルの英語力がなければ契約書を正しく翻訳することはできません。

正確性が必要な契約書の英日翻訳は翻訳会社にご相談ください

正確性が必要な契約書の英日翻訳は翻訳会社にご相談ください

契約書翻訳は、専門用語や表現などの法律英語の知識、長文の読解力、適切な日本語表現、世界各国の法律知識、イギリス英語とアメリカ英語の違いなどを習得しなければ対応できません。さらに、ビジネスの現場ではスピードが問われます。
契約書の英日翻訳が必要な際は、このような要件を満たすプロの翻訳者が在籍する翻訳会社への依頼をおすすめします。

FUKUDAIの英日翻訳サービスでは、英語の文章を正確で読みやすい日本語に翻訳いたします。契約書翻訳の場合は、法律分野に精通した実績のあるネイティブおよび日本人翻訳者が担当します。翻訳後の校正は、日本語に精通した英語ネイティブや日本人の校正者による厳格なクロスチェックを行い、高品質な翻訳をスピーディにご提供します。
どうぞお気軽にお問い合わせください。

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